「涼しー」

図書館に満ちた冷たい空気と彩蓮の声を聞きながら、ああ、最近同じ場面があったよなとか思う。

うん、あった。

昨日だ。

終業式の後イッチー達と行ったショッピングモールでイッチーが同じことを言っていた。

「成流?行こう?」

入り口で立ち止まる俺を不思議そうな顔で伺いながら彩蓮が言う。

「ああ、そうだな」

返事とともに足を動かし、でも頭では続きを思案する。

変なのだ。

今日の俺はどうしてこんなにも色々なことを忘れているんだろう。

正しくないか。

忘れると言うか、経験として覚えてはいるけどそれはどこか遠くの方にあって、昨日のことですらポンと蘇らないのだ。