嬉しい気持ちを全面に『ありがとう』と言っているのは多分、僕じゃなくても分かるだろう。

　俺は彩蓮のこういう真っ直ぐで素直な面に触れる度にドキッとさせられる。

　ああ、断っておくがこの”ドキッ”は断じて恋愛のそれではない。

　と、思う。

　だって、家族みたいな存在の子に（実際身内な訳だし）、十五年過ごした今更になって好きになるとかあるはずないし。

それに、きっと。

俺はまだ誰かを好きになったことがないから分からないけど、きっと誰かを好きになるって言うのはもっと温かさとか優しさとか、そういうものに満たされるものだと思う。

恥ずかしくなったり切なくなったりするものだと思う。

だけど、俺が彩蓮に感じる”ドキッ”ははもっとこう、焦らされるような居た堪れない感じだ。

別に彩蓮のことを嫌いとは思わないけど、この気持ちはどちらかと言えばそっとに似た感情だ。