どれも誰しもがパッと浮かべる空や海のイメージカラーとは全く違う。

そして降る蝉時雨。

その全てがあまりにリアリティがなくて、俺は夢の中にでもいるような気分になる。

もしかしたら、今だったら、この広い空を好きなように、自由に、どこまでも飛んでいけるんじゃないかと思えてくる。

気付くと俺は立ち上がっていた。

馬鹿みたいに両手を大きく広げて……。

なんだこれ?

お前は鳥にでもなったつもりか?

頭の奥からそんな声が聞こえてくる。

そこで俺はふと現実に戻る。

現実の俺はただの高校生で。

羽なんて持っていないごく普通の人間で。

空を飛べるはずもない僕は足を前に出して細かい砂の上を歩きだす。