次第に陽は落ち始め、少しだけ夕方のような空気が立ち込めてくる。

「夏だなぁ」

それは何となく発した、零れたに近い言葉だった。

はずなのに、音として、物体として耳に届くとよりハッキリ意識させられた。

「じゃあな」

「は?まだ方向一緒だろ?」

「何か海に行きたくなったから行ってくるわ」

自然だけが取り柄のこの田舎にとって、海に行くのは至極容易い。

「何それおもしろそ!俺も行く!」

「いや、上手く言えないけど一人で行きたい気分なんだけど」

「ロマンティストだねぇ」

「ええー。俺も海行きたくなってきたんだけど」