だけど彩蓮の存在は云わば幻のようなもので、俺にしか認知できない存在で。

 そうなると、俺は本当に毎年あの丘陵から花火を見上げてたのか甚だ怪しい。

 俺が持っている思い出は全部が現実のことじゃなかったとか言いきれない。

だけどリアルに体験してきたとも言いきれないのだ。

「大丈夫」

 大丈夫。

 もしあの場所から花火が見えなかったなら違う場所を見つければいい。

 会場で座ってゆっくり花火が見れなくなったらみんな初めは俺を責めるかもしれない。

 その時は謝ればいい。

 きっとみんなはすぐに許してくれる。

 違う場所を探すのだって、きっとみんな何だかんだ協力してくれる。