俺は毎年あの場所から花火を見てきた。

 あそこは何もない場所だけど、だからこそなくなることもないだろうと思う。

 だって、この町に住むほとんどの人々が知らない穴場で、開発云々の話だって聞いたことがない。

 だけど……。

 後ろを振り向けば確かにそこには丘陵が見える。

 が、あの場所から本当に花火は見えるのか?

 彩蓮のことは覚えている。

 曖昧なところもありはするけど思い出はちゃんとある。

 だけど、彩蓮とのことはどこまでが現実でどこからが夢なのか。

 彩蓮は俺で俺は彩蓮で。

 その事実は変わらない現実だ。