それから俺たちはお茶を飲んで、お菓子を(俺はまだ少しだけにとどめたが)食べ、沢山話した。

 沢山。

 沢山。

 途中、仮病を使ってやろうかと思うくらい根掘り葉掘り踏み込まれた。

 その度に、俺が今まで一方的に作ってきた壁は破壊されていった。

 壊れたその場所には、イッチーや中田くん。

 鈴城さんと波野さんも。

 代わりにみんなで温かな海のような空間を作ってくれた。

 それは”僕”の壁のように体現されるものじゃない。

 だけど心の深いところがとても温かくて、それだけは分かって。

 俺には海が見えた。

 鮮やかなコバルトブルーの海じゃなくて、あの日見た深くて暗い、だけどとても柔らかな海が見えた。

俺は、深い呼吸をしていた。