「俺さ、中田くんの言ってた通り壁を作ってたんだ。断っとくけどイッチーたちだからとかじゃなくてこれは昔からの癖でさ。昔から何となく家でも外でも俺は物分かりがいいとか大丈夫とかそんなポジションだったんだ。そう思ってもらえるのは嬉しくてさ、俺はそのイメージを崩さないようにしてた。でも、いつからかそれに疑問が生じてた。俺は本当にそうなりたいのかって。本当は違うんじゃないかって。ダメな時だってあるし頼りたい時だってあるんじゃないかって。でもずっとイメージの俺を生きてきたからさ、それを崩すのが怖くって。そのイメージを崩した俺はちゃんとみんなに受け入れてもらえるのかって。壊したら最後、そんな俺に必要性なんてなくなるんじゃないかって。期待通りじゃない俺なんていらないんじゃないかって。そう思ったらもう、なんか、全部疲れてきちゃって。なら、最初から壁を作ればいいんじゃないかって。そうしたらこんな弱い部分なくなるんじゃないかって。だから無意識ではあったんだけど”僕”って一人称はその壁を見失わないようにする役割を担うものって言うか、そんな感じだったんだと思う」