「大したものはないけどゆっくりしていってね」

 母さんが出ていくと場には沈黙が走った。

 それは気まずい沈黙ではなく、単に、だから。

「下、行くか?」

「ごめん。よし、やめよう。おら、いつまで見てんだよ。追い出されるぞ」

 みんな、波野さんや中田くんまでが、初めて招いた俺の部屋を穴が開くほど見ていた。

 故の沈黙。

 別に見られて困るものもないけどあれだけ見られたら流石に恥ずかしい。

「成流っちさー、一人称、どうしたの?」

 イッチーに怒られた鈴城さんは頬を膨らませながら言う。

「うん?」

「それ、俺も思った。成流って一人称”僕”じゃなかったっけ?」