「母さん、違うんだ。ただ海を見てたら入りたくなって、そしたらでかい波が来て。別に何かつらいことがあったから死のうとかそんなんじゃなかったんだ」
「な、あんたって子は本当に!いいわ。こうしてまた起きてくれたんだもの。でも!海に一人で行くのは禁止よ!本当に嫌だわこんなこと。先生、この子の様子はどうかしら?」
母さんは忙しく医師に尋ねる。
完全に流れがおかしかったが若い医師はそんなこと気にもしないで答える。
「大丈夫です。諸々の数値も安定してますしこうして話している内容も変なところは見受けられません。食欲もあるようですし目が覚めたのならこのまま退院で大丈夫でしょう」
「あらやだわ!それならお父さんに連絡しなくちゃ!成流の目が覚めたって聞いて父さん早退してこっちに向かってるのよ」
言うだけ言って、母さんはまたドタドタドタと病室の外へと出ていく。
「まあ、そういう事だから安心して。ああ、でも君は一週間近く眠っていたから食事は軽いものから慣らしていくように。欲張って食べると胃が驚いて消化不良を起こすからね」