おば、中年女性はブツブツ言いながら二階へ続くエスカレーターへ、俺達は少し間隔を空けてから一階奥にあるフードコートへと向かった。
「あれ?結局決めてなくね?」
「でーたよ、ナル語」
”ナル語”とは中田くんが勝手に括りをつけた俺の発する言語のことだ。
まあ、経緯を話した訳では無いから中田くんにそう思われる事は仕方ないと思う。
でも今のは少し違うだろ?とも思うのだ。
今のは完璧なる独り言であって中田くんへ向けた言葉じゃない。
言うなれば俺が俺に向けた言葉。
自己との対話である。
「いやさ、どうせ来る場所なんかここしかない訳だし、それなら何食うか決めとこうと思ってたんだよね。担任の話も長かったからその間に考えてたはずなんだけど……。どうやら答えを出す前に思考が逸れたらしいな」