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ミーンミンミンミン。

蝉の鳴き声にはっと我に返る。

ちらちら灯る提灯の明かり。

風に運ばれてくるソースの匂い。

笑い声や呼び込みの声。

隣で笑っている彩蓮。

ああ、そうか。

ここは海の裏にある丘陵地で、俺は花火を見るためにここに来ていたんだっけ。

一瞬感じたリアルな感覚は多分少し離れたところに海があるから呼び起こされたのだと思う。

微かに聞こえる波の音とか、離れていても漂ってくる潮の匂いとかそういうものがあの日のことを思い出させたのだろう。

「ねぇ、成流?」

それまで食い入るように会場を見つめていた彩蓮がふぃっとこっちを向いた。