色々なもの、太陽も、人のエネルギーも、そういう全てが強い。

俺は夏というかその強さが苦手だった。

その中にいると何かしなきゃって、何かしろって急き立てられている気分になった。

そんな夏が始まったんだなと思ったら、エネルギーに溢れる前に海に行きたいと思った。

静かな海をただ眺めたいと思った。

だからあの日、俺は海に向かった。

 砂が入ると面倒だなと俺は靴も靴下も脱いでいた。

 裸足になって歩いた砂の上はまだ充分に熱を含んでいて生ぬるいと言うよりはしっかりと熱かった。

 ああ、そうだ。

 あの日、あの海で、俺はイッチーのことを思い出した。

 あの日はどうしても一人で行きたかった。

 何をするでもなくただぼうっと海を眺めたいと思った。