「あっそ」

 俺が短い返事で済ませたのはハニカミとかときめきとかそういうものが成す故ではなかった。

 何だか、どうしてか分からないけど、そう言う彩蓮の声に強く夏の終わりを感じたのだ。

 こう、胸がギュウッと締め付けられるような感じ。

 ”あ、終わる”って思った。

 何がかは分からないけど”最後だ”って思った。

 理由なんて分からないし(もしかしたら理由なんて存在もしないかもしれないけど)寂しいって言うか、悲しいって言うか、そうやって胸が締め付けられる。

そのせいで上手く声を出せなかったのだ。

そこで会話は一度終わり、俺は無言で、彩蓮は鼻歌を奏で、周りからは蝉の鳴き声と人の喋り声が漂って、俺たちはそんな中を並んで歩いた。

それからはあっという間に花火の会場の入口に辿り着く。

一軒目の的屋さんの前で彩蓮は足と鼻歌を止める。