そんな事を考えていると目の前ではあっという間に屋台の提灯が顔を出している。
普段は静かなこの町に、今日だけ特別賑やかな話し声が充満している。
「あー、お腹空いたー。ねえ?成流はまず何から食べる?」
「ふっ。なんだよそれ」
思わず吹き出す俺に彩蓮は顔いっぱいにハテナマークを浮かべている。
「彩蓮の楽しみは花火じゃなかったのか?結局花より団子かよ」
「そんなの……」
彩蓮は一度そこで言葉を切る。
それから顔いっぱいに笑顔を溜めて……。
「どれも同じくらい楽しみにしてたに決まってるでしょ?縁日も。花火も。浴衣も。こうして成流と来ることも」
両腕を腰に当て何故かドヤっている。