波野さんは多分イッチーのことが好きだ。

ちゃんとよく見た上でイッチーのことが大好きなんだと思う。

俺にできることは無いけど、いつかその気持ちがイッチーに伝わって、そうして上手くいくといいなと思う。

「成流くんは花火大会いかないんだよね?」

「そのつもり」

ザァーザァーザァー。

何となく気まずくて逸らした視線の中で、窓に強く打ち付ける雨粒が見える。

「残念だなぁ。成流くんが来たらイチくんは絶対喜ぶのに。もし気が向いたら来て欲しいな。私も成流くんも一緒にみんなで花火見たいし」

特に返事は必要としていないのだろう。

波野さんはそれだけ言うと少し早足で、少し前を教室まで歩いて行ってしまう。

なんて答えたらいいか分からない俺はそんな波野さんの後ろを少し離れて歩いて教室まで歩いた。