「イチくんはね、高校生になって成流くんや中田くん、もちろんスズちゃんも。みんなと仲良くなって少し変わったように見えるんだ。ほら、イチくんって素で目立つじゃん?だから気付くといつも誰かしらが『イチくん!イチくん!』って。ずっとそんな感じだったから、多分本人は無意識なんだろうけど完璧になろうとしすぎるって言うかそういう所があったんだよね。でも多分、成流くんとかが知ってるイチくんってそのイメージとは少し違うでしょ?」

そこまで話すと波野さんは少し寂しそうに笑う。

彼女はどうしてそんな風に笑うんだろうと気になった。

気にはなるんだけど、そこに踏み込んでいいのか分からないまま俺は黙り込んでしまい、そのせいで余計どんな言葉を発したらいいのか分からなくなって俺は波野さんから視線を逸らした。

「私に対するこう言うのはそれに付随しただけでイチくんのその変化は成流くんたちのお陰なんだよ。成流くんたちはイチくんと仲良くはしてくれるけど個々がしっかりしてるって言うかみんな雰囲気が違うじゃない?上手く伝えられないんだけどみんなそれぞれに自分の世界を持ってるっていうか。だから多分、出しやすかったんじゃないかな?格好悪い自分を。今日だって近くに成流くんがいなかったらイチくんは日直の仕事をしていったよ。成流くんがいたから甘えて自分の都合を優先したんだよ」