窓には大量の雨粒が叩きつけていて、電気がついているとはいえ何となく暗い廊下を今こうして歩いているのは百パーセントイッチーのせいだった。

「大体イッチーは波野さんに甘えすぎだと思うんだ」

「あま……え、なのかなぁ?」

波野さんは雨の叩きつけている窓の方を見ながら呟く。

「完璧甘えだと思うよ。イッチーって適当に見えて実はめちゃくちゃの真面目くんじゃん?そのイッチーがだよ?日直の仕事を放棄するなんて相手が波野さんじゃなきゃしなくない?って思うんだ」

「うーん。そう言われるとそうかも?でも私だけだったら多分放棄してないよ?イチくんとはそれこそ物心着く前から一緒だったけどこうやって物事を放棄するのなんて最近……、多分、成流くんとかと絡むようになってからだよ?」

「そうなの?」

意外すぎる真相に横を歩く波野さんを振り向く。

波野さんは強く打ち付ける雨粒と正反対な慈愛に満ちたような笑顔でどこでもない空間を見つめている。