「今年も夏が終わるねー」
人混みを外れた俺達は浜の裏にある丘陵へ来ている。
「何だかんだ二人で会場から花火を見た事ってないよねー」
彩蓮はくすくすと笑う。
小さい頃、親たちと来ていた頃は浜の会場から花火を見上げるのが普通だった。
普段味わうことの無い人の多さに、それだけでテンションが上がったものだ。
だけど親から離れ、二人だけで花火を見に来るようになってからは何となくその五月蝿さに居心地の悪さを感じて歩き回った挙句、俺達はこの場所を見つけた。
周りには背の高い木が生えているだけで特に何も無い。
他には何も生えないから地元の奴らもわざわざ来ない小さな丘陵。
浜より少し高いその場所は下を見れば会場の様子が見えるし上を向けばうまい具合に木の隙間から花火が見えるようになっていた。