それにしても人が多いな。
地元の奴らだけならまだしもこの様子だと多分県外からも観光客が来ている。
不景気による煽りに反して訪れる人は年々増えている。
なんなら普段なら滅多に見ることの無い外国人までもが今この会場内には多数見受けられる。
「まだ何か買うのか?」
「うーん。そうだねー、もういいかなー」
「ならちょっと移動するか」
彩蓮はこくりと頷きほんの少し俺との距離を詰める。
沢山の人混みの中をはぐれないようにして抜け、俺達は露店に犇めく人並みから外れた。
ミーンミンミンミン。
カナカナカナカナ。
みんみん蝉に混ざるヒグラシの鳴き声。
さっきまでは人の声に掻き消されていたそれが今は耳元で鳴り響いている。