「私は過去を振り返らない女なの。でも読みやすくていい本だったよ」

「で、どれよ?」

「こっち」

少し賑やかではあるが個々がそれぞれに自分達の世界を楽しんでいる。

ここでどう時間を潰そうかと思ったが、こうやって何となしに人間観察をしながらぼうっと写真を流しみるのもたまになら、たまーになら悪くないかもなと俺はページを捲り続けた。

「何とか降る前に帰れそうだね」

「そうだなぁ」

結局、彩蓮は二冊の本を読破していた。

どうせ暇なんだから借りていけばいいと提案もしたがそこは拘りがあるらしく『ここで読みたい』と一点張り。

俺は同じ写真集をパラパラと何往復もさせられた。