まだ昼が過ぎたばかりの時間。
いつもなら強すぎる日差しにこんなに真上を向くことが出来ないのに今日は全然余裕で真上を見上げることができる。
隙間なくびっしりとモノトーンな雲に覆われた空。
それが地上を昼間なのか夕方なのかの検討もつけられない何とも言えない暗さに包み込んでいる。
なかなか珍しい空模様だ。
夏の雨は割りと天気雨が多く、梅雨が明けた後は雨の日だろうと明るいことが多い。
昨日までとは打って変わる気味の悪い肌寒さと湿気に何となく歩みがのろくなる。
ミーンミンミン。
心なしか蝉の鳴き声まで小さく物悲しく聞こえてくる。
「ねえ、成流?」
「んあ?」
止まりかけの思考のせいで間抜けな返事になるが彩蓮は全くそんなことは気にしていない様子だ。