ミーンミンミンミン。
蝉の大合唱で始まった夏休み。
イッチーと一緒に旅にでも行くのかと思っていた夏休み。
だけど始まってみれば今年も彩蓮がやって来て、俺はもう何日もチームイッチーどころか学校のやつらにも会っていない。
「何だか本当に降りそうだねー」
彩蓮は傘をくるくると回している。
俺達は今日も町外れに建つ図書館へ向かっていた。
とはいえ、夏休みの課題はとっくに終わっている。
だけど特段やることがないこの町で、時間を潰せる場所(なるべく知人に会わないで済む場所)を求め、俺達は毎日図書館へ通っている。
そりゃありすぎる余裕で課題を終えられもするわけだ。
「花火大会大丈夫かなー」
彩蓮は落ちる雨の様にポツリと呟く。
「まだ二日あるし余裕だろ」
言いながら暗い空を見上げる。