ゴワゴワしたヘタを取っては捨てる。

濃い緑がなんとも夏らしいなと思う。

「父さんだってそうよ。好きなものもあれば嫌いなものもある。大人になったからって好きになれる訳でもないしね」

「ふーん」

 しかし、大人とは校長然り先生然り、どうしてこう話がダラダラと長いのだろう。

 もしかしたら何か重要なことを言っているかもしれないのに、ダラダラ話すから受け取り側としたら何が言いたいのか分からなくなる。

「ねぇ、母さん」

「なんで御座いましょう?」

「たまにはさ、冷やしトマト以外になったりしないの?このトマト」

今朝方母さんが採ってきたトマトは冷蔵庫でこれでもかと冷やされていて美味そうだ。

美味そうではあるが、物心ついてからずっと冷やしトマトとしてしか食べていない。