母さんは管理の力を行使できないまま、結局毎年畑にはトマトが植えられている。
それでもまあ、母さんはなんだかんだ水やりも草の除去もきちんとこなして、収穫してはこうして食卓に並べている。
「母さん」
「本当によく呼ぶわね?何?あ、待って。やる前に手を洗いなさい?」
水道を捻ると蛇口からは生温い水が出てくる。
ああ、夏だなぁと思う。
「どう?今年のできは?美味しそう?」
「美味そうだよ。ほら」
「分からないのよねぇ。美味しそうとかどうとか。そもそも嫌いだからその感覚全く分からないわ」
「母さんでも嫌いなものって普通にあるんだなぁ」
「アンタ……、母さんをスーパーマンか何かとでも?母さんだって嫌いなものの一つや二つ。苦手なものの一つや二つ、そりゃああるわよ」