まるで犬がお気に入りの玩具にじゃれ付いているが如く。

「痛っ……」

最初こそ肌に落とされるのは口づけや舌を這わす熱っぽいものであったというのに。

突如首元から噛みつかれた刺激は場所を変えて何か所も。

出血まではせずとも痛みが伴うそれはしっかりとこちらの肌に噛み痕を残しているのだ。


胸元の服の生地を避けてまで噛みついてきた行為には流石に待ったをかけて腕を突っ張り威嚇してしまう。

そんな私に向けられるのはまったく悪びれていない先生の無表情と、

「キスマークなんて生温すぎるだろ」

「………はっ?」

「噛みつくくらいヤバい奴の所有物だって示しておかないと」

「…………………………………っ!!?」

一瞬は何を言っているのかと呆けたけれど。

理解が追いついてみればどうやらこれは相当の独占欲ってヤツ。

………多分。

「い、いやいやいや、先生!?私別にモテませんから!先生が危惧してこんなモノつける必要なんてまるでないですから!!む、寧ろ…善良な市民の皆様の方が不必要な気まずさを覚えちゃいますよ!?だって、私もう正式に先生の奥さんなんですよね!?高瀬医院の医院長婦人なんですよね!?そんな私が噛み痕鮮明に外を闊歩するとか先生の印象の方が…」

「ああ、ピヨちゃんは引き続き基本引きこもっててもらうつもりだから」

「はっ!?なんでっ!?」

「いや、寧ろ何で?」

「はいいっ?!」

「何でワザワザ俺のピヨちゃんを人目に晒さなきゃいけないの?外になんか行って変な虫がついたらどうするの?」

「なっ……わ、私だってたまには外に出かけたり…」

「じゃあ、尚の事しっかり俺のモノだって名前つけておかないと」

「痛っ__!!」

ああ、もう………やっぱり変な人だった。

変な人というより………

私ばか?