心臓が…痛い。

あまりの痛さに涙が浮かぶほど。

あれ?でもこの涙は本当に痛みから?

この涙は…

「はあ………」

「っ………」

「やっと………抱きしめられた」

……初めて満たされた歓喜からのものだ、きっと。

「………先…生」

「………呼ばないのかよ」

ああ、少しばかり不貞腐れた様な口調。

でも、だって……

「っ…………おと……は」

「小さい。………聞こえないって」

恥ずかしいんですよ?

ずっと『先生』であった人を。

大人であると思っていた人を

「…………………音葉(おとは)」

親しさを込め名前で呼ぶことは。

「………日陽」

親しさを込めて名前で呼ばれる事も。

「日陽」

「っ……」

キツク抱きしめられる事も、

「……んっ……」

抱きしめられながら頬に、耳元に口づけられる事も、

「………っあ……」

耳輪を食まれる刺激も、

「………んんっ……」

首筋を辿る唇と舌のザラリとした感触も。

…………ってか、

「っ……ちょっ……いつもより濃いっ!長いっ!!っ……エロイっ!!」

あまりの濃密な感じに驚いてついつい両手で先生の胸を突っ張っちゃったくらいに。

「……当たり前だろう。やっと煩わしい縛りがなくなったってのになんで可愛いピヨちゃん相手の抱擁で済むと思ってるんだ?」

「っ……そ、そりゃあそうですけど」

「そもそも昨夜『先生に……触れてはダメですか?』なんて発情全開の顔して誘っ…」

「誘ったのは私ですよね!?そうですよね!!はいっ!!分かってます!!分かってるので皆まで言うな!!」

「……分かってるなら大人しく愛でられて困ってろ」

「っ~~~」

困ってますよ。

もう充分に。