ここまで話しが進めば開き直ったかのように先生の不貞腐れも明確だ。
面白くないと。訴えるのは表情から態度から息遣いにまで。
流石に申し訳なさから変な汗がじわりじわりと浮かぶくらいに。
それにしたって私がそんな大胆な提案をしていたなんて。
お酒の力というのは恐ろしいな。
やっぱりアホ程飲むのは考え物で控えよう。
「はあ……本当…心底限界の極みだった」
「っ……」
「何も覚えてないピヨちゃんは全力で誘惑してくるし」
「す、すみません」
「俺の拒絶に貧血起こすくらい傷ついて泣くし」
「ご…ごめんなさ…」
「……目の前にいるのに…」
「……え?」
「抱きしめられない」
「………」
「好き合っているって分かってるのに自分の好意は示せず、泣いてるのを見て見ぬふり」
「っ……」
「キスすらできない。………それがどれだけ苦痛だったか」
それは……私もよく分かる。
苦しくて痛くて。
ふとした拍子に喉元まで込み上げる感情を無理矢理に飲み込んでは胸の奥が焼けただれて。
そんな思いを……先生もしていた。
先生は理解している分もっと……?
「でも……もう充分だ」
「っ……」
「………………日陽(ひよ)」
あっ……
血が騒いで鳥肌が立つ。
鼓膜を震わせた心地のいい低い声と、馴染みがなくも焦がれた呼び方に。