夕べって……あの後の時間よね?
出かけてくると、確かに先生は出て行ったけれど。
だけどまさかこんな風にウチに来ていたなんて誰が予想出来ただろうか。
「驚いたわよ。玄関入るなり私とお父さんに頭下げてね、『何の挨拶もせず承諾も頂かず、勝手にお嬢さんと入籍してしまいました。順序が間違っている事も承知でお怒りも受ける所存ですが、日陽さんだけは俺に譲ってください』って、」
「っ……」
「もう、お父さんも唖然としちゃってねえ。でも、すぐに『ふざけるなっ』って殴りつけちゃって、」
「っ……はっ!?えっ?先生殴られたの?!」
「殴られてたわよ。胸倉掴まれて『一回結婚に失敗してる癖に、そんな奴にやれるか!』って激昂したお父さんに罵声浴びせられながら」
「っ…な、なんで。……そんな失礼な」
「それだけあんたが可愛いのよお父さんは。」
それは、言われなくとも感じ取って過ごして来た今までだけども。
でもまさか本当に殴るなんて。
殴った上にそんな罵声までぶつけていたなんて。
あまりの衝撃続き。
信じられないと額を抑えながら座り込んでしまったくらいに。
だって…なんで…。
あんな事のあとになんで…。
「……先生、殴られた後外に追い出されちゃうし大変だったのよ?」
「なっ…」
「認めない!ってお父さんに追い出されて。それでも玄関前で何時間もお父さんの承諾もらえるの待っててさ」
「っ……」
「『日陽さんと引け目なく並んで歩ける夫婦になりたいんです』って言って、何時間も待った先生にさすがにお父さんも折れてね」
何それ…。
訳が……分からない。