目が覚めたら……
日陽に戻ろうか。
『ピヨちゃん…』
ただの日陽に。
どうしても無理だと感じるんだから仕方ないですよね。
こういう時の為に渡してくれたのですよね。
ねえ、先生…。
こんな逃げ道を用意してくれていた事さえ今となっては残酷。
結局、私は先生のなんだったのでしょう?
それすらもう……確認する余力もない。
『すぐ戻る』
そう言って出ていった先生が戻ったのは午前の2時過ぎくらいだったんじゃないかと思う。
玄関から真っ直ぐ。
眠っている私の部屋に静かに入り込むと脈を測って額に触れて。
最後に……頬をひと撫で。
全部、覚えてる。
ただ、眠っているフリをしていただけだから。
一体、どんな顔をしてたんでしょうね?
どんな事を思い私に触れて部屋を出ていったのか。
どんなでも今更…。
それが、最後の抱擁だ。