ああ、綺麗。
お面を外してクリアに捉えた先生の姿の妖艶な事。
ふわりと真横からすり抜ける風に黒髪が遊ばれて、そこから覗く切れ長の双眸がいつもより少し困惑を映して私を捉える。
きっと……夜の暗さの中であっても私の頬の赤は鮮明であっただろうから。
表情だってきっと熱に浮かされ、溺れた様な物だろうから。
気が付けば先生の方へと身体を向けていて、無意識に伸ばした指先は躊躇いながらも先生の手に絡み付いて持ち上げて行くのだ。
「………ピヨちゃん、」
嗚呼、その声が好き。
今も昔も……。
この掌が……好き。
持ち上げた掌にそっと唇を押し付ければ先生の指先がピクリと頬を掠めたのを感じる。
それと同時に先生の手を持ちあげている自分の両手の震えも。
なんて……らしからぬ。
こんな自分の性分である意地っ張りを放り投げた様な行為をするなんて。
そんな羞恥も確かにあるのに……
「っ……先……生」
それを上回る……消化不良の熱情よ。
もう……
「今夜……」
限界なんです。
「っ……先生の部屋に行っては……ダメですか?」
苦しくて苦しくて声が震えてしまうくらい。
「先生と……一緒に寝てはダメですか?」
なのに、同時浮上する羞恥心から涙腺が崩壊もしそうで。
ねえ、先生…。
「っ………先生に……触れてはダメですか?」
私に……触れてください。
「……………………………駄目だよ」
「っ______」
あ……………
耳の奥で破裂。
キィィンと耳鳴りがして、他の音の全てが飛んだ。
「ダメだよ、ピヨちゃん」
先生の声だけが残酷に反響する。