「………綺麗」

「……穴場なんだよな、ここ。道が整ってない分子供連れは登って来ないし、汚れるのが嫌な若者はもっと来ない」

「フッ…確かに。私も足元土だらけ。折角新しい浴衣や下駄なのに」

「………悪いな。……どうしても、ピヨちゃんとここで花火をみたいなと、」

「っ……」

「ここを見つけた時…………そう思ったんだよ」

「っ____」

ドンッ、ドンッと鼓膜に響くのは花火の打ちあげられる音である筈なのに。

どうしてなのか自分の胸の奥でそれが響いているような感覚に陥る。

何かを急かすように立て続けに鳴り続けて。

極彩色が弾ける程に自分の抑え込んでいだ感情も弾けているみたいで。

熱くて、熱くて…。

先生?

『ここを見つけた時』と言いましたが、それは何時の事ですか?

だって、私と縁日に行くことになったのも花火を見る事になったのも今日の成り行きからだった筈だ。

ここに来ることは予測された事ではなかった。

じゃあ、何時?

今でないなら…。

私と再会した後でないなら……。

何時見つけて、

何時の時から……私と観たいと思っていたのか。

「っぁ____」

込み上げる感情に耐え切れず口を開けば音のない嗚咽が漏れ始める。

先生が恋しくて恋しくて、もどかしくて…。

お面の下で盗み見る先生の横顔がもどかしくて。

こちらにない視線が欲しくて。

先生が欲しくて欲しくて欲しくて…。

先生が……



「っ……センセ…イ」

「……ん?」



先生が……欲しいです。