「それでは失礼しますね先生」

「はい、失礼します」

とりあえずそんな一言で締めくくられた鉢合わせタイム。

ぺこりと頭を下げるとこちらの進行方向とは真逆に歩んでいく姿を程々に見送ってからようやくの脱力。

なんていうか…超消耗したんですけど。

ってか、お母さんどんだけ喋るのよ。

一方的にニコニコ喋っちゃって、先生なんて相槌打ってただけで殆ど声発してなかったじゃん!

あー、もう、超疲れ…

「………俺、危機一髪」

「……………はっ?……危機?」

「そうか……絶対に一発は殴られるのか………困ったな」

「…………………ブハッ、」

思わずだ。

うん、思わず。

これは噴かずにいられないというもの。

だって、まるですでに殴られたかのように頬を摩って憂鬱そうに息を吐く先生の姿が横にあるんだもん。

「クックックックッ……」

「笑うか」

「ぐふっ…ククッ……ひぃぃぃ、だってぇぇぇ、あははははは!」

「他人事だと思って」

「お父さんに殴られる先生……ブッ…ははっ、ダメェェェ、超見てみたい」

「………まあ、一発で済むなら安いものか」

「っ………」

ああ、もう……笑いさえ止まる。

一言の結論とポンポンと頭を撫でられる感触には。

本当に……お面様様だ。

顔が……腑抜ける。

期待が溢れて、溢れて、

この夫婦関係の根本を忘れて、勘違いして…。

でも……

勘違いじゃない?