「はい、りんご飴」
「あ、どうも」
「ほい、綿菓子」
「ありがとう…ございます」
「かき氷はレモンだよな?」
「あ、……はい」
「水風船は……」
「っ……ちょ、待っ…待って先生!!」
「ん?」
いや、そんな『何?』みたいな顔で振り返られても。
「……そんな短時間でいっぱい食べれないし……持てないですよ」
「……ああ、…悪い」
流石に苦笑しながらの突っ込み。
だって自分の手の中にはまだ食べきれていないりんご飴やかき氷や綿菓子や。
屋台の並びに入った途端、見つけ様に次々にこれらを買い与えてくれて。
生憎口は一つの手は二つだ。
最初こそその好意を無下にしたくなくて受け取っていたけれど限界というものがある。
それでもだ……ちょっと……これは狡いし嬉しい。
全部……前に私が欲したものなんだもんな。
かき氷の味までしっかり覚えててくれてるとか……。
嬉しすぎるでしょ。
「考えなしで悪かったな」
「いえ。……ちょっと驚きましたけど」
「……年甲斐もなく浮れてるのかねえ、俺」
「っ………」
ポリポリと頭を掻く横姿には駆け引きの様な物も羞恥もない。
ただ客観的に自分を捉えた感想の様な。
何に対してなのは明確じゃない。
もしかしたら久しぶりの縁日の雰囲気にって事なのかもしれないけれど。
……浮れててほしいですよ。