知り合いに遭遇率の高いこの縁日。

いや、縁日目的に遊びに来たのだと言い訳出来なくもないが、『何故先生と?』なんて疑問は確実に投げられるだろう。

先生と一緒に暮らし始めてからの二週間、本当に私の外出は最低限で。

日中は基本インドアを決め込んで一歩も外に出ていないのだ。

買い物は閉店間際のスーパーに行くくらいで。

サングラス着用は必至。

とにかく自分の帰郷や先生との関係はひた隠しに過ごしていたのに。

あれ?

これ、行かない方が平和なんじゃない?

「っ……やっぱり帰りま」

「却下」

「じゃ、じゃあ別行動」

「それはデートと言わない」

「っ…じゃあじゃあっ、どうしたらっ!?」

何を言っても却下なんかい!!と、内心プチパニックでオロオロと立ち往生してしまえば、まったく焦った様子もない先生がフウッと息を吐きだすなり繋いでいた手を離してくる。

スルリと自由を得た手の感触には一瞬嫌な焦りまで浮上しかけたけれど。

「待て、」

「………へっ?」

ま、待て?

えっ?今『待て』って犬に命じる様な言い方で私を制しました?

しかも…えっ?そのまま放置に歩きだすっ!?

「ちょっ…先…」

「すぐ戻るから。いい子にここで待ってなさいって」

「っ……」

待ってろって……。

私はペットの犬ですか?

忠犬ハチ公ですか?

まあ、素直に待ってしまうんですけどね。

逆らえないんですけどね。

だって、なんだかんだ私だって先生と縁日デートをしたいと思ってるんだから。