「っ………先生、私自分で着付けとかできませんよ」

「……」

会計が終わった後今更に言うのもなんですが。

今程見立てて買ってもらった浴衣の袋を両手で持ちながら、気まずい感覚に自分の女子力の無さを打ち明けてみる。

今時の女子の皆様といえば驚くくらいお洒落には前向きでいらっしゃるようで。

浴衣の着付けなんて当たり前とばかりにあっさり自分でしてしまうみたいですけど。

先生も当然それが私にも備わっているものだと思って買ってくださったのかもしれませんが……できません。

分かってます。

その無言の注目も『もっと早く言えよ』という真っ当な不満からですよね。

でもだって、なんか言いにくかったんですもん!!

先生がわざわざちゃんとした呉服店なんかで調達し始めるから。

今の時代呉服屋じゃなくてももっとお手頃のそれがそこら中で売ってるんですよ!?

人が戸惑っている間にサクサクと店員さんと話し進めて選び始めるから、『私着付けできませんよ』ってあの場では言えなくなったんですよ!!

だからって、買った後の方がタイミング的には悪いですよね。

「っ……やっぱり返してき…」

「着付けなら俺出来るから」

「……はっ?」

「帰るよ」

「っ……」

そんな、当然のように手を差し伸べられても。