「近所の祭りか……そういや久しく顔出してないな」
「そっちもですか?」
「いや、近所ってだけあって昔からの顔なじみのおばちゃんとかに絡まれるから」
「ふっ…確かに。規模が大きい分知り合いに鉢合わせなんて必然ですもんね。ウチの親もそれを楽しみの一つに今も行ってるんじゃないかな」
毎年欠かさず、たった一度の年だけ父が丁度出張でその時に先生が代わりにつれて行ってくれたんだった。
まあ、何にせよだ。
目的の観覧車はここでどう待とうが動くわけもないんだからして。
「とりあえず……デートと言うなのお散歩はここまでですかね?運動不足の足も充分に動かしたし、先生に至っては雑貨屋で何か買いましたよね?何買ったんですか?」
「………買い忘れた」
「………はっ?」
いや、買い忘れたってしっかり今紙袋を手に…
そんな突っ込みを入れるより早くだ。
先生の意識はすでに何かここに無いものを探し求めるように歩きだしていて。
しっかりと繋がったままの手によって自分も必然的に引かれて歩き出す事になるのだ。
よく分からないのが、先生本人が行く先をよく分かっていないように感じる事。
どこに行けばいいのかと半信半疑に進んでいるようで、その視線も何かを探してよく動く。
何を探して求めているのか。
よく分からないままについて歩めば一応先生の目的とするところには辿り着いたのだ。
それでも、コレは予想外。
でも、次に向かうであろう所はよく分かった。