「あー………そうだった。すっかり忘れてたな」
先生が言い並べたままに、雑貨屋を巡り、お洒落なカフェでランチもし終わった午後の時間だ。
メインとも言えそうな海沿いのデートスポット広場にある観覧車の手前。
休日ともあって場所としては賑わっているけれど目的とした観覧車の前は閑散としているのだ。
それというのも、
「そう言えばお盆前の土日ですもんね、ここの花火大会って」
そんな理由だ。
毎年恒例の花火大会は目の前の海に繋がる河川敷で上がり、その準備もあって観覧車は運休となっているらしい。
「自分の中では特に影響のないイベントだったから頭から抜けてたな」
「そうなんですか?」
「もう何年も見に来てないな。ここまで来るのも面倒だし」
「別にここまで来なくてもほら近所の神社から……………あっ!」
「……ん?」
「いや……この花火大会の時って丁度近所の縁日だったじゃないですか。で、中心になる神社からここから上がる花火見えて」
「……今もそうだけど?」
「……へえ、」
そうか。
今もなのか。
ふわりと脳裏に過った夏の夜の彩色は鮮明だ。
その懐かしさを煽るように鼻孔の記憶はわたあめの様な甘い匂いまで呼び起こす。
神社を中心にその近隣幅広く伸びる出店には顔見知りになりつつある的屋のおじさんなんかもいて。
……懐かしい。
そして……覚えてますかね?先生。
いつだったか一度、一緒に行った事があるって。