そうしてようやく並び歩くことを再開してみてもだ、離れて歩いていた時間と大差ない無言の時間。

元々会話の多い先生じゃないし、私も話術に長けているわけじゃない。

そんな二人が並び歩いても結局はどこか単独でデートと言うにはほど遠い。

少なくとも、私が浅い知識で知っているデートとは。

そんな真横をこれまた対照的に嬉々と会話したカップルが腕を絡めながら歩きぬけて行くのだ。

ああ、ほら、あれこそ……。

すれ違うギリギリまで目で追っていたのは無意識だ。

羨ましいと思っていた感情さえ。

「……繋ぎたいの?」

「……えっ?」

「手。……さっきすれ違ったカップル目で追ってたでしょ?」

「……………いえ」

「………」

「そんな筈ないじゃないですか」

「………」

「ちょっと珍しかっただけですよ。日中の街中でもあんな風に密着して歩くものなんだなあってカルチャーショックに目で追ってただけです。さすがにああいうのは恥ずかしくて無理です」

「………」

本当………

その的確に発動する千里眼の様な物は勘弁してほしい。

とりあえず、平常心貼っつけてにっこりとまっすぐに否定は返せたけど内心はバクバクと心臓が嫌な跳ねあがり方をしている。

心の奥に咄嗟に押し込んだ自分は『繋ぎたいです』と即答しかけていた癖に。