ああああああ、なんかなんか……やっちまった的な。

「………ふっ…」

「っ……」

「くっくっくっ……」

「っ~~~!!?」

これはまた衝撃の第二波。

驚愕の表情でさえ希少価値がありそうであったのに、今捉える表情はあっさりそれを上回る。

笑ってる。

先生が…。

噛み殺すような静かな物ではあるけれど、普段の徹底した無表情からすればかなり大きな変貌だろう。

一瞬はこの衝撃のデカさに抱いていた他の感情を横おきにして呆けてしまったけれど。

そうだよ。

先生をこんな風に変貌させた元々の原因は…。

「っ……い、行きません」

「………なんで?興奮全開に目を爛々とさせて食いついて来ておいて?」

「昼間のデートっていうのに興味があっただけで行きたいって喜んだわけじゃありません。そもそもインドア派で人混みとか疲れるし面倒だし」

嘘。

本当は行く気全開に沸いた癖に。

ご丁寧に誘ってくれた人を無下にするような言い訳をつけて顔まで逸らして。

「……ふぅん、」

「っ……」

こんな態度をとって、『じゃあ止めようか』なんて言われるのが恐い癖に、痛い癖に。

どうして私は昔から……

「じゃあ、尚の事強行」

「………っ……は?」

「盛大に面倒くささに疲れてもらおうじゃない」

「えっ?」

「………罰」

「………」

「ピヨちゃんが苦痛だと思う罰を与えるのが俺の役目で役割ってものじゃない?」

「っ………」

「精々、『あの子あんなおっさんとデートしてる』って痛い人目に晒されてもらおうか」

「っ……最悪ですね」

「罰だからね」

これも嘘。

最高すぎて……苦しいです。

なにより、

ずっと緩く弧を描いている口元が狡くて甘くて……苦い。