痛みや苦みに繋がる様な甘さは必要ない。
うっかり誘惑に負けて甘味に食らいついたら負けよ日陽!
なんて、自分自身に熱く強く言い聞かせていた中だ、
「ピヨちゃん、」
「あ、はい?」
「……散歩にでも行こうか」
「はっ?……散歩?」
「うん、散歩。………【デート】と言う名の散歩でも行ってみませんか?一応夫婦だし」
「……………………」
あ、フリーズ。
脳内もフリーズしてしまえば表情から体においても全て。
だって、あまりにも自分には……
「…………ピヨちゃん?」
「……っ…あ……えっと………………デート…ですか?」
「うん、デートです」
「っ……こんな昼間にっ?」
「昼間に?って………あ、流石に嫌なのか。こんなおっさんと並んで歩くとか……」
「昼間のデートってどんな事するんですかっ!」
「っ………」
あっ……なんか…。
自分らしからぬ感情全開の反応を。
しかも興奮で爛々としながら。
だから、今更追い付いてきた理性様が嫌な冷や汗をかかせにくる。
だって、だって……なんか新鮮で。
そもそもデートと言うもの自体が自分の中では稀なるもので。
それでも過去に数回覚えのあるそれはデートと言ってもレストランでの食事かドライブか。
しかも、どうしても時間帯は夜に限られてしまって。
だから……だからなのだ。
だから……昼間のデートという響きは実に自分の興味と興奮と期待を煽ってしまったらしい。
ああ、この2週間一緒に過ごして来て初となる先生の驚愕の表情よ。
いや、二週間というより……幼少期も含め初めてなんじゃ…。