言うや否や再び覗く肌に触れてくる先生の唇の感触にはついつい無意味に息を止めてしまう。

背後に立っていた姿が私の座っている椅子に割り込むように座り込んで来てしまえば更にその身は拘束されてしまって。

無意識にも唇の感触から逃げようとしても無意味。

まるで喉元を擽るように大きな掌が鎖骨から登り上げて顎の下に留まるのだ。

うっかりだ。

うっかり、一瞬でも気を抜いたらそれこそ勘違いな声を上げてしまうんじゃないかといつも思う。

そう……いつも。

先生がこんな風に私に触れてくるのは割と頻繁で、頭を撫でたり髪を梳いたりとソフトなものから今のこの反応に困る様な物まで。

かと言って、本当に困る様な時間に繋がった事はない。

繋がることもない。

私は………猫。

私は猫私は猫私は猫私は猫……。

困った時は最後はそんな自己暗示が効果覿面だ。

それに先生も一通り私を『愛でて』しまえば、

「……本当、ピヨちゃんに触ると癒されるわ」

そんな、ペット扱いもいいところな一言で絶妙な抱擁タイムも終幕となるのだ。

やっと終わったと安堵する心と……、

……いや、安堵する心だけでしょ。

「………先生も飽きませんね。こんな甘えも懐きもしない女を撫でくり回して何が良いんだか」

もう気が済んだだろうと、呆れてみせた様な一言を自己暗示に、動じてない様な素振りで先生から離れかけたのに。

「……ピヨちゃんさ」

「なんですか?」

「音葉(おとは)