「先生、」
「ん〜?」
「ムサいです」
「…それこそ休診日なんだからとしか返せません。40手前のおっさんの休日なんてこんなもんでしょ」
「……素材が良いのに勿体ない。先生ファンの奥様方が見たら嘆きますよ」
「ああ、別にいいよ。それに、ピヨちゃんにしか見せるつもりもないし」
「っ……」
「あ、それとも……自堕落な俺はピヨちゃんも幻滅する?」
本当に狡い。
終始無表情の淡々口調。
愛想なんてものどこかに落としてきた様なやる気0の駄目男にも感じるのに。
なんでこう、時折的確に意地悪さ滲む発言でこちらを翻弄するのか。
狡いです。
私にしかなんて特別感をさらりと匂わせられたら、嘘にも嫌いだなんて言えるわけない。
「っ……私の前だけなら……いいんじゃないですか?」
私という女はどうしてこう可愛くないのか。
別に『私の問題じゃない』と、意地っ張りにも興味なさげに切り返したつもりの返答。
それでも、
あれ?
なんかちょっと返答とするにはズレた感じだったかな?
なんかよくよく考えたら取りようによっては『私の前だけにして』と独占欲の裏返しに聞こえないか?
なんて、一抹の不安と羞恥が走ったタイミング。
「ピヨちゃん、」
「っ…ふぁいっ!?」
あ、声裏返っ……
「……おいで、」
「っ………」
だから……図ったような間が狡いんですって。