あれだけ人を追い込んで追いやって、まさに婚姻届けを出した直後だというのに。

嫌なら使えと離婚届を渡してくるその思考回路はやはりまったく理解できない。

逃げ出してもいいと今更逃げ道を与えるなら端から結婚なんて言いださなければいいのに。

そんな風に大口を開けて呆けていれば、さらりと補足された

『離婚したらしたで女としては✕バツがつくだろ』

うっかり、成程と思ってしまった私は先生の思考に感化され始めているんだろうか?

そんなこんなな理由で、とりあえず当面の間は結婚した事実は明るみに出さない方が都合がいいだろうと結論が出たのだ。

当然、結婚の証になる様な指輪を出来る筈もなく。

夫婦になったと言えどやはりそれは響きばかり。

寝室にしたってどうだ?

わざわざ空き部屋を一室与えられて、近々自分用のベッドも搬入される事になっている。

寝る場所が異なるわけだからして当然男女の艶めかしい関係になんて一度としてなっていないし。

未だキスの一つもしていない。

………まあ、別にしたいって話じゃないんだけどね。

って、私は一体誰に、何に、言い訳をしているんだか。