日曜のまだ早朝と言える時間。

まだ余裕はあるだろうと注いだ珈琲を片手に、自分の作業ボックスをダイニングテーブルに置いて広げ始めた。

コレが自分の生業。

元々は趣味の範囲であったアクセサリー作り。

それが今はネットショップで予約注文承る程程々に繁盛しているときたものだ。

ビーズなんかを使ったリーズナブルな物から、時には本物の宝石を加工した大掛かりなものまで。

今はまさにちょっとお値段の張るペアリングを製作中なのだ。

ペアリング……ね。

いつもであるなら作業を始めてしまえばそれに没頭するというのに、集中力が持続できないのはやはり『ペア』という部分にだろう。

リングに限らずだ。

ペアルックやらペアカップ、ペアと幸せそうな名のつくものは一通り苦手。

嫌いなのではなくて、寧ろ羨望による苦手意識だと自分でも分かっている。

そう……羨ましくて妬ましくて。

羨ましくとも自分には許されぬ共有と独占欲の世界というのか。

結婚した今でさえ左手の薬指は何の縛りも輝きもないのだ。

まあ、それにも色々と理由はあって、実のところこの婚姻関係を知るのも私と先生と保証人になってくれた二人程度の話なのだ。

それというのも、

『どうしても、耐え切れないくらい嫌になった時は使っていいぞ』

婚姻届けを出した直後。

そう言いながら先生が手渡してきたのはまさかの【離婚届】。