あれ?待って?

えっ?……なんでまたこんな状況に?

一体どんな流れの展開でこうなったんだっけ?と、ひたすらに思考しようと試みるも上手くはいかず。

先生の心を読もうにもこんな時でさえその無表情が崩れることなく、ただまっすぐに困惑に満ちている自分の姿を双眸に収めに来るのだ。

流石にだ、

流石に……心臓がざわめく。

何か……何か音にしなくては。

と、言葉も見つかっていないのに口を開きかけた瞬間に先手を打つように響いたのは、

「ピヨちゃんだからだよ」

「…………え?」

「ピヨちゃんがピヨちゃんでピヨちゃんのままだったからどうしても欲しくなった」

「…………………はい?」

「ピヨちゃん以上に……可愛い生き物知らねえもん、俺」

「っ__________」

こっ………

殺し文句だ。

これは確実に殺し文句ってやつですよ先生。

何が狡いって……こんな歯が浮きそうで照れが生じてもおかしくないセリフを真顔の無表情で言い切った事か。

真正面からこれを食らってポーカーフェイスなんて最早保てるはずもない。

いや、もうとっくに破顔しまくっていただろうけれど、それに上乗せになりそうな身体の発熱よ。

些細な事で一瞬で発火してしまいそうな程危険な火種が体の内側にあって、間違っても爆発しないようにとこちらは必死に処理をしている最中であるのに。

「ピヨちゃん、」

「っ……は…はい?」

「はあ、ゴメン……、」

「へっ?な……何が……」

「ちょっと……我慢できそうにないわ先生」

「っ!!ちょっ…先せ___」

『待って』なんて声を響かせるより早く寄せられた顔の距離。

唇の近くでその息遣いを感じてしまえば思わず身構えて目も唇もキュッと閉じてしまった。