もう、まともな思考も限界だ。と、脱力の勢いでベッドに横倒れてしまった程。
それでも、疑問は疼くもので。
「………ってか、白紙の婚姻届けとかよく持ってましたね?深夜に役所が開いてるわけでもなし、」
「……プロポーズされたら?」
「ゼ〇シィィィィィィ」
「正解」
「いや、正解じゃなくて……。もう、何なんですか。散々反発したのが馬鹿みたいなくらい、がっつり外堀埋めるみたいにこんな物まで書かせてたとか……」
「………」
「馬鹿みたい……、『寂しい』ってだけなら最初の予定のまま犬か猫でも飼えばいいのに。犬や猫の方がよっぽど従順に懐いて癒してくれるっていうのに……なんでまた私みたいな、」
不器用で捻くれてて道まで踏み外した女をそれに選んだのか。
意味が分からない。
可愛くなんて無いのに。
懐いてすり寄る甘え上手なんかじゃないのに。
腕の中に顔を隠しそんな自虐を自分の中で呟いた刹那。
ギシリと軋んだベッドに反応して顔を動かすも体までは起こすに至らず。
いや、起こせなかったが正解。
顔を動かし状況を把握した時にはすでに先生の両腕が自分の頭の横に伸びていて、自分の足の間には縫うように先生の膝が置かれていたのだ。
この状況には今までの葛藤なんてあっさり相殺する威力があったと思う。
だって、あの先生に見下ろされているのだ。
場所はあろうことかベッドの上で、組み敷かれたに近い形で見下ろされているのだから。