子供の時はよく分かっていなかったけれど、大人になって接してみればなんと突飛で不思議系な男性であったのか。

ああ、もう…頭痛くなりそう。

ずっとフル回転しっぱなしの頭に手を添えて、もう限界だとベッドにふらりと座り直す。

この数十分足らずで自分の持ち合わせていた常識が尽く崩れ落ちそうだと、溜め息交じりに項垂れていれば。

「そんなに頭抱える程の話なのかな」

「抱えるに決まって……」

「『実家には帰りたくない』」

「っ……」

「『元の住処にも帰れない』」

「……」

「『住処が定まらなきゃ仕事も定まらない』そんな風に嘆いてたピヨちゃんには俺の奥さんになるって事はメリットの大きい永久就職でしょ」

これまた人の痛く反論の出来ないリアルをご丁寧に並べてくれちゃって。

確かにその悩ましい問題点は優先的にどうにかしなくてはならないものであるけれど。

「でも、永久就職って。…結婚は仕事じゃ…」

「仕事でしょ?」

「えっ……」

「毎日毎日ご飯作って掃除して。土日も関係なく発生する仕事を担う奥様ってどんな職種よりもハードだと思うけど」

「そ、それだったら、住み込みの家政婦でもいいじゃないですか!?何で敢えて奥様な…」

「そこが不倫なんて不貞をしたピヨちゃんが受けるべき罰の意味でしょう」

「っ……」

「人様の幸せな家庭を踏みにじっておいて、自分が幸せな恋愛に巡り合って結婚してなんて考えてた?そんな筈ないよね?罰を欲しがってたピヨちゃんだし」

ああ、もう…その罪悪を持ちだされてしまえば途端に言葉を失う自分の無力さよ。