記憶の無い、先生が語るのみの昨夜の出来事だ。
そんな筈ないと!そんな事思ってる筈がない!と反抗心が出てもおかしくないと思うのに。
そう思えない。
だって、同調しかない。
罰を受けて当然。
そう思っているんだもの、今も…。
自分の中から取り出し不可能である罪を掴むが如く。
胸元をギュッと掴んでいたのは無意識だ。
でも、まさか、そんなことまで先生に打ち明けてたなんて。
「まあ、だから俺が罰を授けておいてあげたんだよ」
「………はい?」
いやいや、
そこで何で先生が?
なんて疑問は言葉にする前にうっかり飲み込んでしまった。
目前に迫った先生の顔のせいで。
だって……近っ……。
そりゃあ勿論、子供の頃にこの顔の距離まで寄った事はあっただろうけど。
大人と子供の距離と、今のそれとはまるで違う。
それでなくとも、自分の初恋の相手。
恋心は薄れても好きになった要素はそのまま。
ドキリと緊張した動悸が走るのは人間の生理現象と言っていいだろう。
そんな動悸に見事金縛りになっている自分の鼓膜に無情に届く、
「ピヨちゃんの余生、40近いくたびれたおっさんの世話に捧げなさいって」
先生の自虐的なプロポーズと取れなくもない言葉の響き。