それでもだ、自分の事に対しては言い返せないにしてもだ!

「っ……とにかく、既婚者が不誠実するなってことを言っ」

「奥様にする抱擁は不誠実とは言わないでしょ?」

「………………………………………はっ?」

「奥様を抱き寄せたり頭撫でたりは実に健全で誠実な行為だと俺の中では認識してたんだけど。……あ、コレがDVって言われたら別の話になるけど。ピヨちゃん的にはその範囲?」

「い、いや、抱き寄せたり頭撫でるのをDVなんて思ったりはしないですけど……って…えっ?いやいや、あの……はい?なんか色々会話がカオス……」

どこから突っ込んで正さなきゃなんだっけ?

あまりにさらりと会話の迷路に誘われてしまった故に、どこがその入り口だったか確かめるのにも手間取ってしまう。

DVの話の前なんだよ。

DVの話のせいでなんかさらに困惑したけどそうじゃなくて。

そうだ、……そうだよ!!

「っ……先生の言う奥様って誰を指してるんですか?!」

「ピヨちゃん」

「っ……いや、先生はとても魅力的な男性だとは思うのですが、個人的にもう不倫はちょっと、」

「いや、奥様って言ってるでしょ?不倫って他に奥様いないと成り立たないものだから」

「はっ?いや、だってさっきまで可愛い奥様がいるって惚気て…」

「可愛い奥様」

「…………」

結論と同時。

ピッと先生の人差し指は逃げ道を塞ぐように私の鼻先を突いてきたのだ。

これにはもう……。

私の事だったんかいっ!!!

そう叫ぶに決まってる。